学芸員だより(谷地森)

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谷地森 秀二
日本大学農獣医学部卒 農学博士

1967年宮城県仙台市生まれ。現在、高知県須崎市に在住。
日本大学で畜産学を学び、同大学院修士課程修了後、アドベンチャーワールドでのシャチ、バンドウイルカ等の飼育、調教、女子栄養大学人間・動物学研究室嘱託助手、栃木県立博物館学芸嘱託員など勤務。一貫して動物と関わり合う業務に従事する。
平成13年4月に高知県へ移住。平成14年9月より「NPO法人四国自然史科学研究センター」設立に参加し、平成15年4月にセンター設立後は副センター長として勤務。平成16年6月より、センター長として平成31年(令和元年)3月まで従事。
令和元年4月より越知町立横倉山自然の森博物館に学芸員として勤務、現在にいたる。
野生動物生態研究者として四国全域を対象に調査活動を展開するとともに、高知県に自然史博物館をつくる活動を続けている。

博物館の水庭 -横倉山の貴重な水たまり-

横倉山自然の森博物館には、水庭と呼んでいる面積およそ470㎡の水面が博物館を囲むように広がっています。深さは15㎝くらいで、コンクリートで固められた4段のマスに、石灰岩が敷き詰められています。溜まっている水は循環していて、一番下の段の出水口から濾過槽に流れ落ちた後、ポンプを使って地下の配管を通じて一番上の段の床から湧き出すようになっています。博物館のまわりに植えられた木々が大きくなり、毎年多くの落葉が水庭に入り込んでいます。今の水庭は、まるで林の中の泉のようです。

春から秋にかけての期間、水庭を見ていると、たくさんのトンボが飛び、壁にはヤゴの抜け殻が付いています。私は、この水庭にどんなトンボがどれくらいいるのかを知りたくて、令和2年4月17日から、博物館に出勤したら仕事を始める前に水庭を見回って、壁についているヤゴの抜け殻を集め始めました。その結果、令和3年4月16日までの間にギンヤンマ、シオカラトンボ、コシアキトンボ、ベニトンボなど4705個の抜け殻を集めることができました。私がお休みで見回れないときや、私が見つける前に水に落ちてしまう抜け殻もあったと思いますので、それらも合わせるとこの一年間で5000頭くらいのトンボが博物館の水庭から飛び立っていったのではないかと思います。集めた抜け殻は、大きな瓶に詰めてとってあります。

水庭ではトンボの他にも貝類、両生類、魚類など多くの生きものが暮らすようになりました。横倉山は地形が急なために、池や大きな水たまりがありません。博物館の水庭が水の中の生きものたちの生息環境となり、横倉山の生態系にとって重要な場所となってきました。

昨年の夏。この水庭の大掃除がおこなわれました。石灰岩を取り除き、水を抜き、たまった落ち葉を取り除かれ、水の中の生きものたちにとっては、環境の大変動が起こりました。掃除が行われる前に、 水の中の生きものたちを救い出すプロジェクトを、自然観察会「横倉山の生きもの調べ『水の中の生きもの』として、2021年6月26日(土)と27日(日)に行いました(有志による救出会はその後も数日行いました)。参加者の皆さんが長靴を履いて、網とバケツを持って水庭に入り、生きものたちを捕まえて、避難場所となる越知町内の別の人工池へ移されました。

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掃除が終わり、水庭は見違えるほどきれいになりました。来館されるお客さんたちも「きれいになっていいねえ。」、「この建物は新しいのですか?」などの声が寄せられています。

冬を越え、春が来て、初夏となった今、博物館の壁面には、ヤゴのぬけがらはありません。2021年秋から2022年春にかけては、トンボたちにとって試練の時期となりました。果たして、今年の夏にトンボたちはまた水庭で卵を産んでくれるでしょうか?

トンボたちの様子は変わりましたが、カエルとイモリは早くも戻ってきています。ヤマアカガエルの産卵が2月12日に確認され、シュレーゲルアオガエルとニホンアマガエルの合唱が3月に始まりました。ツチガエルはまだ鳴いていませんが、水際にはたくさん座っています。アカハライモリも水庭の落葉の下に潜んでいます。

大変動が起きた水庭の環境、これからの変化を見つめていきます。

巡回展「拝啓 牧野富太郎さんへの手紙」

巡回展「拝啓 牧野富太郎さんへの手紙」

佐川町、越知町、高知県立牧野植物園、練馬区立牧野記念庭園と当館が連携する牧野富太郎生誕160年記念事業の巡回展で、2021年に実施した手紙コンクール「拝啓 牧野富太郎さんへ」に寄せられた手紙の中から、「牧野富太郎賞」などに選出された作品を展示しています。

  • 会期:令和4年10月1日(土)~令和4年11月27日(日)
  • 時間:午前9時~午後5時
  • 休館日:毎週月曜日 ※10/10は開館
  • 入場料:博物館入館料でご覧いただけます。